ジェネリック医薬品は、先発医薬品と同じ薬効がありながら安い費用で使用できるという大きなメリットがあります。
しかし、その反面問題点も見られますので、特に調剤薬局事務や薬剤師の仕事に就いている方は認識しておくことも大切です。
ジェネリック医薬品の課題・問題点
ジェネリック医薬品には主に次のような問題点が考えられます。
- 安定して供給することは容易ではない。
- ジェネリック医薬品には先発医薬品にある規格がない場合もある。
- 先発医薬品で承認されている適応症が適応されていないこともある。
- ジェネリック医薬品情報が不足している。
- 製造工程・添加物の違いで未知夾雑物について問題視されることもある。
- 薬価にバラツキがある
安定供給が困難である
先発医薬品1種類に対し、何社ものメーカーが存在しているのが、現在の日本におけるジェネリック医薬品の特徴で、製薬メーカー、卸し会社、薬局という納入経路で薬は流通しています。
なので、卸し業者に在庫がストックされていないことも往々にしてあり、薬局が薬を手に入れるまで4日前後もかかることは珍しくありません。
また、ジェネリック医薬品は中小企業メーカーが製造しているケースが多く、薬の原材料が値上がりすると利益率が悪くなり、儲からないので生産が中止され、入手できなくなるということが時々繰り返して起こっています。
先発医薬品と有効成分は同じでも規格が乏しい
薬効成分の含有量規格が複数揃った医薬品などが販売されていりことがありますが、ジェネリック医薬品では市場で頻繁に使用される規格だけしか生産しないというケースがあります。
その結果、先発医薬品には複数の規格があってもジェネリック医薬品には用意されていないことも少なくなく、他には、小包装も先発医薬品と同じ規格が用意されていないこともあり、薬局に在庫がストックされていない原因の一つになっています。
先発医薬品と同じ適応症がない場合もある
ジェネリック医薬品の中には、先発医薬品で使用を認められている症状に適応していないものもあります。
セルベックスという薬剤では、先発医薬品の場合は胃潰瘍と急性・慢性胃炎の急性増悪期の症状に適応していますが、ジェネリック医薬品の場合は胃潰瘍のみで、急性・慢性胃炎では使用不可となっています。
ジェネリック医薬品は医薬品情報が不足気味
医薬品の内容と正確な情報がしっかり提供されることで、医薬品の価値が発揮されます。
ところが、先発医薬品メーカーに在籍するMR(医薬情報担当者)は少なく、ジェネリック医薬品についてもかなり情報不足となっている現状があります。
MR(医薬情報担当者)は自社の医薬品の営業販売も兼ねているので、医薬品の情報提供に割く時間がとれないという事情もありますが、全体的に見ても大きく不足しています。
医薬品は一旦販売したらそれで終わりではなく、市場で使用されている限り、品質や安全についての情
報提供は継続していくことが求められる特性を持った製品です。
しかし、製薬メーカーとして充実した情報提供を担う部署がないという現状は、今後の重要な解決課題だと言えます。夾雑物で製剤品質に差異があることも
生物学的同等性試験にも合格し有効成分は同じであることから、ジェネリックと先発品の効果効能には差異はないと判断してもいいでしょう。
但し、生産過程においては工程が異なるので主成分以外の添加物も異なり、未知夾雑物として不安視されることもあります。
ちなみに、夾雑物(きょうざつぶつ)とは、あるものの中に混じっている余計なものを指します。
ジェネリック医薬品の薬価にバラツキがある
ジェネリック医薬品は1種類の先発医薬品に対して多く存在することがあり、各ジェネリック医薬品の薬価もバラバラです。
先発医薬品の70%くらいの価格にジェネリック医薬品の薬価が設定されるケースがほとんどですが、すでに厚生労働省が規定した薬の公定価格一覧表である薬価基準に掲載されている時は、最安値のジェネリック医薬品と同価格での薬価設定となります。
また、20種類以上が薬価基準収載されていれば、薬価は最安値の90%くらいになります。
元々たった1つしかない先発医薬品に対して、同じ薬効成分であるはずのジェネリック医薬品が数多く薬価基準収載されている分だけ価格に大きな差が発生することになります。
薬効や品質の違いではなく、発売順、薬価基準収載順により、ジェネリック医薬品の価格が異なってくるという状況は、今後、ジェネリック医薬品の普及を進んでいく中でネックになる可能性が大いにあります。
ジェネリック医薬品普及の流れ
医師が処方せんにジェネリック医薬品の商品名を記載し、薬局で調剤して患者に薬をだすというケースが以前は多くありました。
医師が処方せんに先発医薬品の一般名を記載するケースが多くなってきたのは、ジェネリック医薬品を知ってもらい一般的に普及させるため、厚生労働省が推進し出してから以降のことです。
一般名が記入されていれば、先発品、ジェネリック品にこだわらず薬局側で患者に提供する薬を判断し選びだすことができます。
しかし、当時はジェネリック医薬品に対する理解や認識が薬剤師であっても大きく不足しており、大半は薬局の在庫薬を患者に提供する場合が多く、積極的にジェネリック医薬品が使用されていませんでした。
その後、診療報酬改定が2006年に行われ、「後発医薬品への変更も可能」という言葉が処方せん備考欄に設定されました。
先発医薬品が処方せんに記載されていても、医師が「後発医薬品への変更も可能」に同意していれば、患者がジェネリック医薬品を要求した場合、医師に許可を取らずに薬剤師の判断で変更することができるように法改正が行われました。
ジェネリック医薬品のCMをよく見かけるようになったのは、この頃からです。
日本でのジェネリック医薬品の普及状況は欧米より遅れてきたため、業界も発展途上で企業間でも差があり、上記のような各種課題が指摘されてきました。
しかし、厚生労働省が中心となり、安定供給や規格の充実など各メーカーに対して改善指導を実施しているので、医療費の財政負担を軽減する意味からも今後ジェネリック医薬品は普及していくことが想定できます。
薬局や薬剤師も、安全で有効なジェネリック医薬品を患者に安く提供できるように、今後はジェネリック医薬品の情報を幅広く収集していく努力が求められます。
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