分子標的治療薬の開発で創られた医薬品

分子標的治療薬とは何か?

 近年の創薬は、分子レベルで働きかける治療薬が多く開発されていますが、特に癌治療の分子標的治療薬が多く開発されています。

分子標的治療薬は、病のメカニズムやその病気により発現される特有の分子をゲノム解析により見つけ出し、その特殊な発現物質だけを標的にして分子レベルで攻撃し、働きを阻害することで治療していく医薬品のことです。

ちなみにゲノムとはDNAの塩基配列のことをいいます。

分子標的治療薬の開発が進歩したのは、化学合成技術、モノクローナル抗体作製技術、遺伝子組み換え技術が発達し、それらの技術を組合し活用できるようになったことが大きな要因です。

 次にがん細胞への分子標的治療薬は、抗体作製技術と遺伝子組み換え技術を融合して作製されていますが、その作製過程を簡潔に紹介します。

通常、人は生体内に異物(細菌)などが侵入すると、免疫機能が働いて異物(細菌)を体外に排除するか解毒するなどの生体反応を起こすような仕組みが体には備えられていします。

ちなみに、細菌やウイルスなどの異物のことを抗原ともいいます。

免疫機能の一つにタンパク質(抗体ともいう)が産出され細菌やウイルスなどの異物、いわゆる抗原を解毒する働きがあります。

遺伝学的な観点からは同じ一つの細胞から産出される同じ一つの抗体の総称をモノクローナル抗体と呼びます。

病気の発症原因となっている特定の抗原を解毒する働きがある特定の同一抗体として医薬品の場合は作製されます。

 モノクローナル抗体(同一の抗体)を作製する場合は、通常、マウスの蛋白質、いわゆるマウス細胞で作製された抗体ができるので、そのままの状態で人体へ投与すると危険なアレルギー反応を起こす可能性があります。

なので、アレルギーの危険を回避するために、モノクローナル抗体を作製する場合、可能な限りマウスの蛋白質比率を下げるために、遺伝子組み換え技術を活用し、ヒトのタンパク質比率9割以上のヒト型、又はヒトのタンパク質比率8割〜9割のキメラ型を作製することができるようになりました。

以上の技術により、がん治療に極めて有効な分子標的治療薬が作製されるようになりました。

主な分子標的治療薬開発の流れ

 1980年代に、分子標的として上皮成長因子受容体(EGFR)などが発見されたことは、新しい有効ながん治療薬の開発や進歩に大きく貢献することになりました。

分子標的治療薬は、今後もいろいろな治療薬が開発され、がんや免疫疾患を治療する医薬品として、健康寿命を引き延ばし病気で苦しんでいる患者の命を救うことに大きく貢献していくと予想されます。

年代 抗体名
(商品名)
適応病状 分子標的・働き
2001年

トラスツブマブ
(ハーセプチン)

乳がんなどの腺がん

HER2蛋白(膜受容体型チロシンキナーゼ)に結合し増殖を阻害するヒト型モノクローナル抗体。

がんの分子標的治療薬として日本で最初に承認された抗体。

イマチニブ
(グリベック)
慢性骨髄性白血病

bcr-ablチロシンキナーゼ阻害により画期的な効果がある。

リツキシマブ
(リツキサン)
悪性リンパ腫

CD20抗原に結合するキメラ型モノクローナル抗体。

2002年 ゲフィチニブ
(イレッサ)
肺がん

多くのがんで発現するEGFRに結合し、増殖信号となるEGFRチロシンキナーゼの活性化を阻害する。

肺がんの適応が世界に先駆けて日本で承認された抗体。

2005年 ゲムツズマブオゾガマイシン
(マイロターグ)
急性骨髄性白血病

抗体に抗がん物質を結合したタイプ。

2006年 ボルテゾミブ
(ベルケイド)
多発|佳骨髄腫

がん細胞内の蛋白分解酵素プロテオソームを阻害する。

2007年 ベバシズマプ
(アバスチン)
大腸がん

血管新生を阻害する。

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