医薬品の基礎研究から人体投与までの流れ

 新薬を開発するには多くの研究開発費と、長年に渡る期間を要し、創薬、臨床試験、承認審査が行われます。

スクリーニング・基礎的試験では何をするのか

 スクリーニングとは、医薬品としての作用が期待できそうなものを、数多く存在する物質の中から選び出す作業をいいます。

薬を新しく開発する場合は、遺伝子組換え技術、化学合成、抽出などの医療技術を用いて作られた多数の物質から薬候補となり得るものを特定していきます。

新薬になりそうな多くの物の中から、次のような実験を何回も実施していきます。

  • 試験管内で薬理作用を確認する実験:in vitro
  • 動物又は疾患モデルを用いた動物実験:in vivo

繰り返し実験を行うことで、新薬の原型になり強力な作用が期待できそうなりード化合物を選定していきます。

これら一連の作業はスクリーニングとも呼ばれています。

 更に次ようなことを目的として、化学的な修飾をし化合物を多数創り、新薬候補をこれらの中から選定していきます。

  • 化学的に新薬の原型物を安定にする
  • もっと薬理作用を強力にする
  • 毒性を弱める

 この他には注射剤や錠剤などの製剤化を目的として、化学的・物理的な性状を把握するための試験を非臨床試験と同時に実施します。

化学的・物理的な性状を把握するのは、次のようなことに関して人体に安全で安定性の高い製剤を創るために必要となります。

  • 水に溶かすためにはどうすればいいのか
  • 水に溶けるか、溶けないか
  • 水に溶けた際のpHはどのくらいかまたすぐに壊れないか

薬の生産を効率的に行える方法を実現するためにも以上のような試験は必要になります。

非臨床試験(動物試験)では何をするのか

 非臨床試験とは、スクリーニングにより選び出された物質を動物に投与することにより薬の副作用や効果など確認する試験のことを言います。

小型動物であるマウスやラットから始まり、順次大型動物のウサギ、サルなどへ新薬候補の化合物を投与して実験を進めていきます。

現在の毒性試験は、医薬品毒性試験法ガイドライン(1993年改訂)により以前から以下のように改訂されています。

試験名
急性毒性、亜急性毒性、慢性毒性試験
⇒単回投与毒性試験、反復投与毒性試験

致死量
半分の動物が死亡するLD50(50%致死量)の量の値を見出す試験
⇒概ねの最小致死量を単回投与毒性試験で算出する試験

単回投与毒性試験とは

 単回投与毒性試験では、マウス・ラットなどのオスやメスに急性毒性の徴候を確認できるよう量を数段階に分けて投与し性差も確認します。

投与経路は、静脈注射や経口など臨床適応する投与経路で投与されます。

動物の種類、雄雌の性差、投与経路などにより反応にどのくらいの違いがでるかを確認するために、急性毒性の症状、程度、経過などを観察します。

毒性のランクについては、致死量だけで決定されるのではありませんが、大きな要素を占めます。

  • 毒薬…少量でも致死性が高い薬
  • 劇薬…次いで致死性が高い薬
  • 普通薬…多量で致死性を示す薬

反復投与毒性試験とは

 反復投与毒性試験は、繰り返して使用したり、長期間投与し続けても安全であるかを確認する目的で実施されます。

投与は、最低7日以上、さらに1ヶ月以上に渡る長期連続投与も実施します。

投与量は、反応性と用量との関係を確認するため3段階以上設定し、回復試験により、毒性が回復するかも確認します。

この他にも、特殊毒性として、次のような試験が行われます。

  • アレルギー
  • 突然変異原性などの遺伝毒性
  • 発がん性
  • 依存性、組織障害性、光毒性、目毒性、関節毒性などの類似物質から想定される毒性

さらに次のような試験を行い、治験などに備え人への安全性を事前に予測します。

  • 生殖発生試験とは、受胎(妊娠)、胎児、周産期に対する影響を見極める試験です。

    生殖発生試験が行われるようになったのは、過去にサリドマイドを服用した母親から手足が短かかったり、アザラシのような四肢の催奇形成児が生まれた事件が起こっていたからです。

  • 薬効薬理試験とは、対象とする病気にかかた動物に投与し実際に薬が効くかを試す試験です。
  • 一般薬理試験とは、人体に対して副作用などの有害作用が発生しないかを試す試験です。
  • 体内動態試験とは、投与回数や投与量を決定するために体内での薬の動き方を調べる試験です。

 以上のような動物実験は、GLP(医薬品の安全性試験の実施に関する基準)に従って、承認申請データの信頼性を向上させ、解析・評価を正確に実施するために行われます。

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