薬局における在宅医療

在宅医療が普及するまでの時代背景

 医療保険制度は健康保険法が1992年に施行されると共にスタートし、戦後施行された国民健康保険法によって、日本に居住権がある全国民はいずれかの医療保険に加入義務があり被保険者となる国民皆保険が定着しています。

国民皆保険制度により、病気や事故などで健康を害した場合、どこに住んでいても安全で同じレベルの医療サービスを低額費用で受けることが可能となっています。

しかし、少子高齢化が年々進展し、医療保険の財政負担も増大し続けてきた経緯があります。

この状況を改善し制度を継続運用させるために、政府は1982年以降、医療保険制度改革を矢継ぎ早に実施してきました。

  • 1985年:地域医療計画、病床の抑制の改正
  • 1992年:医療提供の理念規定の改正
  • 1998年:介護保険制度の制定
  • 2000年:介護保険制度の施行
  • 2006年:医療保険制度、介護保険制度の大幅改正

1992年の医療法の改正では、増大する老人医療費を低減させるため、医療提供の場として従来の外来、入院に加えて居宅が追加されました。

また、医療提供の理念規定も見直しが行われ、従来の医師に加えて薬剤師も医療を担える専門家として明文化されました。

その後、1994年に行われた診療報酬改正では、医師・看護師・薬剤師が提供する訪問管理指導に対して診療報酬が給付されることになり、積極的に在宅医療が行われるようになりました。

2000年4月に施行された介護保険法では、医師・薬剤師が提供している訪問管理指導に対して介護保険が給付されるようになりました。

2006年の医療保険及び介護保険制度の大幅改正では、医療施設の一環として薬局が正式に指定されました。

このように在宅医療が急速に推進されてきた時代背景として、1980年頃以降、自宅より病院での死亡者数が約9割を占めるようになり、入院が長期化し医療費財政の負担が大きくなってきたということが挙げられます。

 もし、適切な在宅医療を提供できれば経済面では、入院の長期化を抑制でき財政の医療費負担の軽減に繋がるということと、医療の品質面では、終末期や長期療養の状態にある患者さんが、長年暮らしてきた愛着のある地域や自宅で、家族と共に安心して療養することができ、人生を終えることが可能になります。

現在、医療保険及び介護保険の2制度により在宅医療のサービス提供が行われています。

薬局による在宅医療の流れと業務内容

 薬局が担う在宅医療には、次の2通りがあります。

  • 訪問薬剤管理指導:医療保険で提供する在宅医療
  • 居宅療養管理指導:介護保険で提供する在宅医療

医療保険と介護保険での在宅医療の違いは、保険制度運営の規定・基準、保険の請求先、名称などが若干異なっていますが、薬剤師が行う業務の基本内容はほとんど同じです。

対象者については、介護保険の給付サービスを利用できる方は、介護保険による在宅医療を優先利用し、介護保険給付サービスを利用できない方で自宅療養している患者さんの場合は、医療保険の在宅医療の利用対象となります。

医療保険に基いて薬局が担う在宅医療の内容

 医療保険制度上で行われる薬剤師による在宅医療は、次のような流れで実施されます。

  1. 処方せんによる訪問指示が医師から出されます。
  2. 自宅訪問することを患者さん又は家族へ伝達し同意を得ます。
  3. 書面による情報提供を医師から初回訪問時までに入手します。
  4. 処方せんに従い調剤を実施し患者さん宅を訪問し薬学的管理指導を行います。
  5. 医師へは患者さん宅を訪問した結果を書面にて報告します。
  6. 薬歴などの必要事項を記録し保管します。

患者さんからは月毎に一部負担金1割を回収し、患者さんの自己負担金以外は、医療保険の保険者にレセプト請求します。

訪問管理指導料は初回訪問から6日間以上間を開けて月4回まで算定でき、末期がんと脳室内出血(IVH)の患者は月8回の週2回までは算定可能です。

介護保険に基いて薬局が担う在宅医療の内容

 介護保険での在宅医療の業務内容も、医療保険とほぼ同じです。

訪問指導を行う切っ掛けは、医療保険の場合、医師・患者からの依頼に基づいて訪問薬剤管理指導が行われますが、介護保険の場合は、医師・患者に加えて介護サービス提供事業者・ケアマネジャーからの依頼に基づき居宅療養管理指導が行われます。

 また、訪問指導する際の患者・家族への同意を得る方法は、訪問薬剤管理指導は□頭でOKであるのに対し、居宅療養管理指導は、同意文書で内容を説明し確認してもらう必要があります。

提供サービスと手続きに関して介護保険法では、サービス提供者側が文書による説明を行い、利用者に内容を確認・納得してもらい同意を得る必要があるからです。

保険請求については、介護保険へは居宅療養管理指導料を、医療保険へは薬剤費などを請求する必要があります。

患者さんへは加入している保険制度の負担割合分を徴収します。

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