調剤薬局事務としては、介護を受けている方が薬をもらいに薬局に来ることも多くありますので、介護保険制度についても基本的な知識はよく理解しておきましょう。
介護保険制度は、高齢化が急激に進んでいる社会状況に対応するため、2000年からスタートした介護保険法に基づいて運用されている社会保険制度の一つです。
また、介護保険を利用するには、要介護認定の申請を保険者である市町村に行い、利用者の実態を把握するために訪問調査などを受けて、第1次審査、第2次審査を通じて認定を受ける必要があります。
次に、介護保険制度の運営のしくみや申請から認定までの流れ、介護サービスの内容について見ていきたいと思います。
介護保険制度の誕生と時代背景
現在の日本社会は、皆さんもご存じの通り、世界にも類を見ない急激なペースで少子高齢化が進展しています。
実際、65歳以上の高齢者が全人口の何%を占めているかという高齢化率を見てみると、介護保険制度が始まった2000年当時は17.4%でしたが、2015年は26.7%になり、既に超高齢社会の真っ只中という状況になっています。
今後も2020年は29.1%、2030年は31.6%、2040年は36.1%というペースで高齢化が進んでいくと予想されており、2025年には患者全体に占める65歳以上の高齢者比率は約半数にも上るだろうといわれています。
このような社会情勢の急激な状況変化により、医療制度改革を医療保障という限られた枠内で行うだけでは、高齢者急増による介護サービスや医療サービスのニーズに答え、制度を維持していくための財源を賄うことが難しくなってきたという現実がありました。
このような時代背景の流れの中で、従来の課題を解決するために、新たな枠組みとして社会保障制度を発足する必要性に迫られ、2000年い介護保険制度が制定されスタートしました。
介護保険制度は、高齢になり加齢や病気などで介護が必要になった場合に、基本は在宅で生活できるように、無理な場合は施設に入居し、どちらの場合も要介護者の生活状況や身体機能を見極めながら、身体の残存機能を活かし自分の意思や力で日常生活を維持して暮らしていけるように支援する制度です。
介護サービスの利用料は、保険より給付があり自己負担額は1割程度ですが、要介護度の状態によって給付上限額が決められています。
従来から高齢者の介護・医療・保健・福祉を支える制度は存在していましたが、運用はバラバラで行われており、次のような点が問題になっていました。
- 個別に制度運用されており、利用者には内容がわかりにくかった。
- 利用する場合は、個別に手続きが必要で手続きが煩雑であり利便性が悪かった。
- 利用者側が自由に好きなサービスを選択することができず、費用負担も公平でなかった。
2000年に制定された介護保険制度は、従来の問題点を解消するため制度を統合し一本化することで、高齢者でも利用する場合にわかりやすく、自分に合ったサービスを自由に選び、費用負担も公平で、医療、保健、福祉のサービスを効率的に提供し保険給付できるように考え出された社会保険制度の一種です。
介護保険の利用から認定までの流れと内容
介護保険を利用するには、要介護認定の申請手続きを市町村窓口で行い、訪問調査と医師の意見書を元に、コンピューターによる一次判定、介護認定審査会による二次判定が行われた利用の可否、要介護度区分が決定され、市町村の認定を受けて介護サービスの提供を受けることが可能になます。
実際に提供されるサービス内容については、介護サービス計画を利用者本人や家族でも策定可能で、支援業者に依頼すれば、介護支援専門員(ケアマネジャー)により策定され、その計画に基づいて具体的な介護サービスの提供が開始されます。
要介護認定の申請から認定までの流れ
1. 市町村へ要介護認定の申請を行う
次のような状況にある方は、自分が住んでいる市町村窓口に、本人か家族が要介護認定の申請を行い、認定されれば給付を受けることが出来ます。
また、介護支援事業者に申請手続を委託することも可能です。
介護保険の第1号被保険者の場合- 要介護状態と言って、認知症や寝たきりで、日常生活を送るための食事・排泄・入浴などに介護が必要となる状態にある方
- 要支援状態と言って、身体介護が今後必要になる可能性があり、日常生活において一部家事援助などが必要となる状態にある方
- 指定されている特定疾病に該当し、要介護状態や要支援状態にある方
2. 調査員による利用者宅への訪問聞き取り調査
市町村では申請受理後、市町村職員かケアマネジャーを、調査員として利用者宅へ訪問させ、要介護の可否を判定するための判断材料となる項目について状況調査を行います。
3. 一次判定と主治医による意見書
訪問調査が終了すれば、心身の状況調査基本79項目と主治医意見書に基づいて、コンピュータで一次判定が行われます。
4. 介護認定審査会による二次判定
介護認定審査会の委員が集まり、訪問調査での特記事項、一次判定結果、主治医の意見書などに基づいて、要介護度区分について協議・検討し決定を下します。
要介護度の状態は、自立(該当しない)、要支援1〜2、要介護1〜5に区分されていて、介護保険のサービス給付は、要支援と要介護の判定を受けた場合のみ受けることが可能です。
5. 市町村からの認定通知
市町村は、介護認定審査会の審査結果に基づき、申請者に状態区分の判定結果を通知します。
通知を受けた利用者が判定結果に納得できない時は、都道府県の介護認定審査会へ不服申し立てを行うことも可能です。
6. 介護サービス計画(ケアプラン)の策定
認定がおりた場合は、要介護度区分ごとに段階に応じて決められている支給上限額内において、利用者にとって必要で最適な介護サービス計画を策定します。
利用者や家族が自分たちで介護サービス計画を策定してもかまいませんが、その場合は自分で各サービス事業者と連絡調整する必要があり現実的には難しく無理があります。
なので、一般的には居宅介護支援事業者に依頼することがほとんどで、その事業所に従事しているケアマネジャーに策定してもらうケースが大半です。
7. 介護サービスの利用開始
介護サービス計画が完成すれば、プランに基づいて各サービス業者へ介護支援専門員が連絡調整して、利用する業者を決定し、具体的に介護サービスの提供が開始されます。
原則、要介護認定は6ヶ月が有効期限となっていますが、この期間中に利用者の状態や状況が変化し、要望があれば、介護サービス計画の内容を適宜見直しすることもできます。