同じ薬を飲んでも人によってその効き方に違いが生じることがあります。

人種差や個人差、生活習慣も大きく影響しますが、食物との食べ合わせによっても大きく差が生じます。

これは、どんな薬を飲んでも一旦肝臓で代謝されるという人に本来備わっている生体防衛反応という働きによるものです。

 次に、どのようなしくみで薬が代謝されるのかなどについて解説していきますが、調剤薬局事務員も薬業界に関わる者として、最低限の知識は身に付けておいて頂きたいと思います。

 また、現時点で、調剤薬局事務の資格しか取得していない方も、将来的にキャリアアップを目指す場合もあると思います。

例えば、登録販売者などは最も身近で可能性がある資格になるので、もし本気で目指す場合にも参考になると思います。

さらに、調剤薬局事務として薬局やドラッグストアなどで働いていると、家族や知り合いなどからも質問される場合もありますが、薬の基本的な知識を身に付けておくことで、自分自身も役立ちますし、周りの人にもよいアドバイスをしてあげることができるので、知っておいて損はないと言えるでしょう。

次に薬の基本的な代謝機能について解説していきたいと思います。

体内で薬の代謝(薬の分解・解毒)が変化する要因とは

 私たちは、生身の人間である以上、一生涯病気や怪我なしに過ごしてきた方はまずいないと思います。

生まれた時から死ぬまで人生の節目で薬のお世話になっているはずです。

時には私たちの命を救い、健康を取り戻す大きな助けとなっている薬ですが、人の身体にとってほとんどの薬は体内に入ると異物として認識されるので、分解したり、解毒したりして体外に排出しようとする生体反応が自然に発生するしくみが備わっています。

 そのしくみには、次のような基本的な働きがあり、最終的に尿や便になどの排泄物に混ざり体外に排泄されやすいようになっていますが、代謝物に変化していても、なお強い作用を示すものも中にはあります。

  • 代謝物といって水に溶けやすい物質に薬の成分を変化させます。
  • 作用を示さないよう薬の成分を分解して無毒化します。

 薬が体内で代謝するプロセス(過程・経路)に関しては、薬物代謝酵素とその他様々な要素とが絡み合った関係性が要因となっており、同じ薬を飲んでも効き方が変化するのは、個人差があるからだという言葉で表されています。

実際、個人差には、年齢差、人種差、男女の性差なども影響し、様々な要素を含めて効き方は異なってきます。

なので、患者は新薬や既存の薬でも自分は初めての薬などを使用する場合は、よく観察して体調変化などに注意する必要があるので、薬の服用履歴を把握しておくことも大切です。

薬との飲み合わせによる代謝の変化

 薬物代謝酵素が薬の代謝に大きく関わっているのですが、チトクロームP450(CYP)という肝臓のミクロソームに存在しているものが最も重要になります。

チトクロームP450は、CYP1からCYP4まで4種類が存在し、さらにサブファミリー、CYP1A1、CYP1A2…と各種類ごとに細かく分かれており、生まれ持った遺伝的な差異によっても各々の作用力には個人差があります。

また、様々な条件とCYPが重なることで、薬の代謝も大きく変化してきます。

 たとえば、CYP1A2には、気管支を広げ喘息症状を改善する効果があるテオフィリンを代謝する働きがあります。

しかし、タバコなどを吸っていると、CYP1A2酵素がより活性化されテオフィリンの代謝率が上がるので、体外に排出され薬効が低下してしまいます。

よく、喫煙は喘息患者にとって禁物と言われているのはこのような理由からです。

反対に、CYP1A2の酵素活性を阻害するものに、抗菌薬のニューキノロンというものがあります。

もし、これを喘息患者が薬物治療中に一緒に使用した場合は、テオフィリンの効果が強くなりすぎて、副作用を起こす可能性もあります。

このように、薬を同時に複数使用した場合などは、CYPの働きが変わり、互いに影響し合い作用を変化させるケースが考えられます。

薬との食べ合わせによる代謝の変化

 以上のようなしくみを相互作用とも言いますが、これは食物との食べ合わせでも起こることがあります。

例えば、降圧薬のカルシウム措抗薬を使用している時に、グレープフルーツを食べたりすると、弊害が起こることは、よく知られているケースです。

CYP3A4の酵素活性をグレープフルーツが阻害することにより、カルシウム桔抗薬の代謝率が低下して薬の効き目が強くなりすぎて、血圧を過度に降下させてしまうような作用が生じることになります。

 また、免疫抑制薬のシクロスポリンもグレープフルーツとの食べ合わせにより同じような現象が起こるので注意が必要です。

年齢により異なるCYPの活性度合

 年齢差によってもCYPの活性度合いが異なることが明らかになっています。

例えば、テオフィリンという喘息治療で気管支を広げる働きがある薬の代謝率については、成人と比較しても次のように年代によって大きく変化します。

  1. 生後1ヶ月の新生児:成人の半分程度の代謝率(50%)
  2. 生後1〜3ヶ月の幼児:成人と同様の代謝率(100%)
  3. 1歳児:成人の倍の代謝率(200%)
  4. 〜70歳頃:その後徐々に代謝率は低下
  5. 70歳〜:成人の3割程度の代謝率(30%)

人種により異なるCYPなどの欠損率

 人種差によってもCYPやアルデヒド脱水素酵素などの欠損率は異なります。

CYP2C19の欠損率
  • アジア人:約20%と高い欠損率
  • 白人・黒人:数%と低い欠損率
アルデヒド脱水素酵素の欠損率
これはアルコール代謝を行う働きがある酵素ですが、
  • アジア人:30%〜40%の割合で存在する。
  • 白人や黒人:ほぼ存在しない

以上の事から飲酒などアルコール類に関しては、黒人や白人と比較して私たちアジア人は弱いということがわかります。

このような理由から、新薬を日本国内で開発を行う場合、検査データが必要になりますが、外国人のみの検査データだけでは製造許可は下りません。

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