ここでは、調剤薬局事務員として理解しておいてほしい薬の排泄率が変化する要因について解説していきたいと思います。

基本的な仕組みを知っておくことで、調剤薬局事務員であっても家族にアドバイスしたり、患者さんとの何気ない会話の中で異変に気づき、専門家に相談し早めに対処するようにと助言することも可能です。

体内で薬の排泄率が変化する要因とは

 どんな薬でも一旦体に入ると、最終的に必ず排泄されます。

排出物としては、息、唾液、涙、鼻水、乳汁(授乳中)などでも体外に排泄されますが、特に腎臓と胆汁の働きによって、体内で不要になった老廃物は、排せつ物と一緒に排泄されるような仕組みになっています。

ここで問題になるのが、病気などにより腎臓機能が減退した時で、薬の排泄遅延や未排泄により体内に薬が留まり、効きすぎで副作用などを発生させる場合があります。

なので、胆管閉塞や腎障害を患う患者へ薬を投与する場合は、その状況を見極めながら通常よりも少なく適切な量を投与することになり、患者側も医師から言われた薬の用量を厳守する必要があります。

このような病気による機能障害だけでなく、排泄機能に影響する要因は他にも考えられるので、薬を使用する場合は医師や薬剤師などの専門家に従い注意して服用することが重要です。

 また、腎臓には分泌・ろ過の機能もあり、排泄されるだけでなく必要な成分は再吸収するという働きもあります。

このような排泄機能が備わっているために、尿の水素イオン濃度(pH)に変化を与えたり、再吸収を阻害する薬を誤って併用すると排泄率が変化します。

この場合、排泄スピードが遅れれば体内に薬が蓄積して効きすぎるため中毒を発症し、排泄スピードが速くなりすぎれば薬がほとんど効かないという状況に陥ります。

ですが、このような仕組みを逆手にとって、有効的に使用した実例がペニシリンという薬です。

戦後当時、抗生物質のペニシリンの費用は通常の状態で使用すると高額でした。

そこで、意図的にペニシリンの尿排泄率を低下させるためにプロベネシドという薬をペニシリンと同時に使用することで、体内の蓄積量を増やし従来より大幅に少ない投与量でも薬効を持続し発揮させて医療費を抑えることに繋げることができました。

ちなみにプロベネシドは痛風の予防や改善に効果がある薬で尿酸排泄を促ながす働きがあります。

 また、バルビツール系薬による中毒が発生した場合、重曹を使用しての治療は現在も実施されています。

尿をアルカリ性に傾ける働きが重曹にはあるので、使用することでバルビツールの尿排泄が促され改善することが出来ます。

ちなみに、バルビツール系薬は、鎮静や痙攣などの治療時に用いられる薬ですが、いずれにせよ 腎臓や胆管に機能不全や障害を持っている場合は、用量用法を必ず守るようにすることが大切です。

薬との食べ合わせで悪作用が起こる場合とは

 薬との食べ合わせにより、身体に悪作用を及ぼすケースには、ワルファリンと納豆、次にクロレラ、青汁との食べ合わせがあります。

血液凝固因子に影響を与える成分としてはビタミンKがよく知られており、体内に入るとカルシウムと結合し凝固させる働きがあります。

ワルファリンは化学構造がビタミンKともほとんど一緒なので、成り済ましてカルシウムとビタミンKの結合を妨げ血液凝固を防止し血液をさらさらにすることで、脳血栓の再発予防に効果を発揮できます。

過剰に納豆を摂った場合、ビタミンKを納豆菌が腸中で大量生成し、ビタミンKの働きによって血液凝固が促進され、ワルファリンの効果が帳消しになってしまいます。

またビタミンKは、ほうれん草などの野菜類にも多く含まれていますが、大量に食べない限り過剰な心配は必要ありません。

 但し、健康によいということで、サプリメントでビタミン剤を常用している場合は、補給成分にビタミンKが含まれていないか注意する必要があります。

ビタミン剤の場合は、1日の摂取基準値を数粒で補給できるものも多く市販されており、過剰摂取に繋がる可能性もあるので、気づかずに常用していると、取り返しのつかない事態に陥ることも考えられからです。

 薬を服用して、よく効く、ほとんど効かないなどの差は、単に男女差、年齢差、体力差などの個人差だけでなく、飲み合わせ、食べ合わせなども含めたいろいろな原因により各自変化が生じてきます。

なので、この薬は以前は効果があったのに、今はほとんど効き目がないとか、ひどい場合は副作用が起こったなどということも現実的に起こり得ます。

薬局で調剤薬局事務の受付をしていて、このような会話を患者さんから聞いた場合は、上記で説明してきたことが原因になっているケースもあるので、早めに担当医師や薬剤師などに相談するように助言してあげましょう。

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